差分確認方法の色々


 加工シミュレーション後に、加工面と、製品面やひとつ前の工程での加工面との 差分チェックを行いたい場合がよくあります。というより厳密には必ずそうなの かもしれません。
 要望の中身を整理してみますと、ひと言で差分と言いましても、その言葉の 裏には様々な暗黙の要求があります。指定した位置の差分を調べてみたい というのはもちろんのこと、それが全体的にどのような分布になっているのか? また、それぞれ許容値を超えた部分に関しては、見落としのないようにしたい などなど...です。

 TRYCUTでは「被切削材(W)」→「基準形状指定(B)」に て比較対象を指定しておくことにより、差分に関して様々な視点で確認できるように してきました。ヘルプにも書かれてはいますが、今一度これらの 機能群を整理したページを用意しました。
 機能として以下の4種類です。特定のケースでは1種類で良くても、多くの ケースでは、どれが欠けても片手落ちです。差分の確認にご興味のあるユーザー様に 置かれましては、今一度どのような機能群があるかをご理解いただき、適材適所で 機能を使い分けていただければと思います。

1. 差分値参照
2. 差分の線描画
3. 差分塗り
4. 差分リスト出力(SDK利用)


1. 差分値参照
 TRYCUTの画面上で右クリックして指カーソルを選択し、 ワーク表面をクリックすると、その位置にZ方向の差分と最短距離の差分の方向に線表示さ れると同時に、それぞれの距離がほぼ瞬時に左パネルの「Z増分」「距離」に 表示されます。
 線表示色は、初期設定状態では、プラス側は黄色、マイナス側は赤色で表示され、削り 残りだけでなく、食い込み量のチェックにも使えます。
 局部的な状態を知るには適していますが、全体的な削り残りや食い込みの 傾向を把握するには適していません。

※差分の線表示色は「表示制御(P)」→「色の設定(W)」にて変更することが 出来ます。


2. 差分の線描画

 "L"キーを押すことにより、ほぼ瞬時に以下のようにZ方向の差分が線表示されます。差分 表示色は上記の局所的な差分表示と同様です。削り残り部と食い込み部は同時に色分けされて 表示されますが、見にくい場合には、それぞれ"+"キー"-"キーにて、削り残り部のみの 表示や、食い込み部のみの表示が行えます。
 全体的な状態の把握ができることと、拡大すれば視覚でだいたいの差分量が把握できるという メリットがあります。ただし、線表示が邪魔になって形状が見にくくなる場合もあります。

※差分の表示はTRYCUTの表示粗さに従って表示されます。
※差分の線表示色は「表示制御(P)」→「色の設定(W)」にて変更することが 出来ます。


3. 差分塗り

 「被切削材(W)」→「差分塗り(F)」にて、Z方向と 法線(最短距離)方向の差分量を境界「指定値を超える差分を対象」にしてペンキやペン番号色を 塗ることができます。全体的な状態の把握と、正確な差分量が把握できるという メリットがあります。
 Z方向を基準にする場合は、ほぼ瞬時に処理が行われます。高速に参照できる利点はありますが、立壁や 起伏の多い形状では差分量が過剰になる場合があります。このような場合には法線方向を基準にして下さい。 ただし内部的に基準形状のオフセット処理を行いますので、しばらく時間がかかることがあります。これは 指定する境界値が小さい方が高速に処理されるという傾向があります。法線方向への処理時間の対応として、 TRYCUT3000(x64版)ではCPUのコアの数だけ処理を並列化し、ほぼコアの数分の倍速化を 実現しています。

 あくまでも弊社内でのテスト結果ですが、例えば
デュアルコア(例:Athlon64/X2)の場合は、ほぼ2倍速弱
クアッドコア(例:Core 2 Quad Q6600)の場合は、ほぼ4倍速弱

で処理されています。Core 2 Quad CPUは、デュアルコアのダイを2つ並べた構造のCPUで、真性4コアではない とされていますが、それでも4コアに近い効果は出ているようです。

※並列処理化の効果を比較される場合には、初期設定ファイル(F1キー)[Define]セクションの "MULTI THREAD"でYES 又は NOを指定してお試し下さい。それぞれ、 並列化処理を「行なう」(YES)、又は「行なわない」(NO)の設定になります。並列化を「行なう」場 合は、コアの数分の並列化処理が行なわれます。省略時は並列化を「行なう」(YES)設定になっています。

Z方向に0.8mm以上残っている部分の表示

法線方向に0.2mm以上残っている部分の表示


※ペンキやペン番号の色は「表示制御(P)」→「色の設定(W)」にて変更することが 出来ます。

 また、加工シミュレータとしては変則的な利用方法ですがペン番号色を利用して複数回の 差分塗り機能を使うことにより、差分量に応じたグラデーション表示も行なうことが できます。例えばペン番号色を1から順番に少しずつ色を変化させて定義し、差分量を順番に増やし て着色させると以下のような表示が行なえます。

 このような表示は手動操作でも行なえますが、法線方向への差分表示機能は、比較的処理時間の かかるものですから、起動オプション(/xd...)でも対応していますのでバッチファイル(バックグラウンド)で 処理させるのも得策でしょう。

 手順として、上記画像の例では、まず差分表示用の初期設定ファイル"sabun.ini"を"trycut.ini"をコピーして 用意し、次に[DMFdata]セクションの"SAVE_LEVEL"(インストール直後1)を2又は3の保存時にペン番号を 残す設定に変更、[Define]セクションの色設定を以下のように変更しておきます。

WORK COLOR=(255,255,255)
PEN1 COLOR=(255,210,210)
PEN2 COLOR=(255,175,175)
PEN3 COLOR=(255,140,140)
PEN4 COLOR=(255,105,105)
PEN5 COLOR=(255,70,70)
PEN6 COLOR=(255,35,35)
PEN7 COLOR=(255,0,0)

この状態で、基準形状を"BASE.DMF"、差分評価形状を"ORG.DMF"とした場合に、以下のような処理を 並べたバッチファイル(*.bat)を実行すると一気に処理を行い最後に上のような差分画像を表示して くれます。ペン番号の数分の指定が出来ますので、TRYCUT2000では7段階、TRYCUT3000では15段階まで 色分けできます。

TRYCUT /i sabun /d ORG.dmf /o TMP.dmf /k BASE /xd+0.0n1
TRYCUT /i sabun /d TMP.dmf /o TMP.dmf /k BASE /xd+0.2n2
TRYCUT /i sabun /d TMP.dmf /o TMP.dmf /k BASE /xd+0.5n3
TRYCUT /i sabun /d TMP.dmf /o TMP.dmf /k BASE /xd+0.9n4
TRYCUT /i sabun /d TMP.dmf /o TMP.dmf /k BASE /xd+1.4n5
TRYCUT /i sabun /d TMP.dmf /o TMP.dmf /k BASE /xd+2.0n6
TRYCUT /i sabun /d TMP.dmf /o OUT.dmf /k BASE /xd+3.0n7
TRYCUT /i sabun /d OUT.dmf

※本処理に関しても、x64版のTRYCUT3000では並列処理化を行なっていますので、CPUのコアの数分だけ 倍速化します。

※色設定の切替では初期設定ファイルに替わるものとして、最新バージョンでは 以下のようなCTCファイルも対応されていますので ご検討下さい。起動オプション/icで指定可能です。

original.ctc インストール時と同じワーク色とペン番号色定義
(trycut.iniより抜粋)
sabun.ctc ペン番号色を利用してグラデーション化した定義
(差分表示などで利用)


4. 差分リスト出力(SDK利用)

 1〜3で紹介した機能は全て目視によるものですが、いかなる目視チェックにおいても、不注意による チェック漏れを防ぐことは不可能です。これを防ぐためには独自のチェック基準を設けて必要不可欠な情報を リスト出力するという手段が適しています。
 本機能はTRYCUT SDKのtrsaveの機構を利用することを前提にしたものですので、 SDKのページで公開しているtrsave1.dllをTRYCUTインス トールフォルダに保存し、DMFの保存機能を利用してご確認下さい。以下のようなリストが 拡張子(*.SA)のファイルに出力されます。

/// 差分情報リスト
-----------------------------------------
+側差分体積=8550.703216 対象格子数=2471453
+側最大差分=3.000000 位置 X= -50.000,Y= -65.000
-----------------------------------------
-側差分はありません

サンプルソースも公開していますので、理想としてはこのソース を元にして、ユーザー毎に必要不可欠なものに改変していただくことを想定して います。とは言え、プログラムの修正がご面倒な場合もあるかと思います。何かこのようなリストが 出ないか? と言ったご要望などありましたら、support@trycut.comまで お知らせ下さい。適用例として補充させていただきます。


[今後の予定]

 差分確認支援として弊社内でのみ利用してきた別ツールです が、TRYCUT3000(x64版)では「複数のSTLやDMFを重ね合わせて同時描画 するツール(半透明表示やテクスチャーマッピングも可)」の無償配布(バンドル化?)も検討しています。


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