G01動作について


<指定位置まで速度Fで動作させるには>

 NC工作機械の軸に限らないことですが、この地球上において、物体を動作させる には、極単純な物理法則(慣性の法則)に従うことが前提となります。具体的には 静止している 物体(軸)を一定の速度で動作させるためには、その一定速度になるまで加速し、停止 させるためには停止するまで減速を行う必要があります。


 仮に直線運動している場合で、終点が決まっている場合には、しかるべき時点から 減速を開始しなければなりません。

 従ってNC制御装置側としても、全ての位置において指令速度で動作させることが できるわけではありません。単純に「指定位置まで速度Fで動作させるには」と言う 見方も適切ではなく、正しくは「指定位置までなるべく速度Fを目標にして 動作させる」という見方で処理することになります。


<減速の必要性>

 もし終点位置で、ある方向へ速度が残っていたとすると、少なくともその直後に 急激な減速を行ったとしても、もはや手遅れでオーバーランしてしまいます。例えば NC工作機械で形状に沿った加工を行っている場合には食い込む場合もあるで しょう。


 しかし形状を削りだす上では、時と場合によっては速度を落とさなくても良い 場合があります。すなわち、このオーバーランの方向が形状に沿っている場合、 例えば次の移動ブロックが接線連続している場合は明らかに減速は無駄になって しまいます。
 では、全く速度を落とさなくてもよいのかと言いますと、これも単純では ありません。次のブロックがいくら接線連続でも、そのブロック自体の移動距離が 極端に短い場合には、やはり減速を行っておく必要はありますし、逆にそのような 微小移動のブロックが接線連続で延々と連なっている場合であれば、減速の必要は なくなります。

 ということで昨今のほとんどの制御装置ではNCデータを数百ブロック先読みして、 ブロック間の接続部での角度を調べ、可能な限り送り速度を落とさないように工夫を 行っています。
 ただ、いくら先読みを行っていても、形状の滑らかさにもよりますが、自由曲面や 起伏の多い形状加工においては、ほとんどの移動指令ブロックにおいて減速を行って いるのが現状と思われます。


<G01動作の速度分布>

 G01に送り速度がF10000で指定されていたとしても、基本的には始点と終点での 速度は0になっています。次の移動ブロックが接線連続になっている場合などは 減速に入りませんが、あくまでも例外だと見なす必要があります。


T0〜T1:加速中、T2〜T3:減速中
注)実際、厳密には上記グラフのような単純なカーブにはなっていません。

 F10000で動作するのは、速度が10000(mm/毎分)になるまで加速が完了した時点(T1) から、減速処理に入るまで(T2)の間だけとなります。減速処理に入るタイミングは、 終点で速度0に出来得るのに十分な条件(その時点での速度と残りの距離)を満たす 必要があるため、場合によっては速度が指定速度に達することなく、減速処理に 入らざるを得ない場合もあります。例えば1mmに満たないような移動ブロックが 連続するような場合は、最も加速された時点でも指令速度までには至っていない はずです。


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