シミュレーションの精度とデータ量
TRYCUTには、切削のシミュレーションを行う上での精度に関連する
重要なパラメータが2つあります。ひとつは被切削材の精度で、もうひとつは
工具の移動ピッチです。これらの初期値は
初期設定ファイルで指定されているもので、ポップ・アップ・
メニューの「オプション(O)」−>「ピッチ(精度)指定(P)」で
起動中の変更も可能です。
被切削材の精度 |
TRYCUTで扱う被切削材のデータは、基本的にXY同一ピッチの格子状の
Z値群となっています。この値はその格子ピッチとなります。この値が小さければ小
さいほど精度はよくなりますが、逆に格子点数は級数的に増え
加工処理速度は級数的に遅くなります。描画速度は、
表示精度の最適化を行なっている場合は影響は少ない。
指定方法は、実際の値を指定する方法と、全格子点数の上限を指定してその範囲内で
最も大きく切りの良いピッチを自動決定する方法が
あります。
注:少なくとも工具の径よりも十分小さい値にする必要あり。
注:この値を小さくすればするほどプログラムが確保するメモリ空間も
級数的に増加し、環境によって動作不能になる場合あり。
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工具の移動ピッチ |
現時点のバージョンでは、工具の移動ピッチに従って工具が置かれた位置でのみ
被切削材を削ってゆくというシミュレーション処理を行っています。したがって
この値は正しくは無限小である必要がありますが、被切削材の精度との関係
からむやみに小さくても意味がなくなってしまいます。最適な値は被切削材の
精度と同じか若干小さい値です。
この値も指定方法は2通り用意されていて、実際の値を指定する方法と、
もうひとつは上記の被切削材のピッチに対する比率で
指定する方法があります。通常は後者で比率が1.0であれば、最も最適な
シミュレーションが行なえるはずです。
なお、この値の大小は、プログラムが確保するメモリ領域には関係しません。
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注意:
被切削材の精度(「オプション(O)」−>「ピッチ(精度)
指定(P)」で変更)については、変更時に設定値が反映されるのではなく、
そのあと被切削材を定義するときに初めて反映されます。また、保存されている
被切削材を呼び出したときは、そのデータのもつピッチの状態で処理されます。
[格子点数について]
TRYCUTで扱う被切削材のデータ構造は、XY方向で碁盤の目状に並んだ位置に
それぞれZ方向の高さ値を持った構造になっています。この碁盤の目のピッチが上記の
被切削材の精度にあたります。この値が小さければ小さいほど、格子位置が
増加しデータ量が増えます。格子点数は、被切削材のX方向とY方向の長さを
それぞれこのピッチで割り算してプラス1(始点位置の分)した値同士を駆け合せた
数が全格子点数となります。
[起動中の消費メモリについて]
昨今のハードウェア性能向上により、大容量(被切削材)のデータを扱うケースが
増えてきています。TRYCUTでは機能に制約を設けることにより、
起動中のメモリ消費を削減することができます。起動後の変更は
「オプション(O)」−>「被切削材データ保持レベル(L)」で
行なえますが、通常初期設定ファイルにて、
よく使われる設定を指定しておきます。
1:「C」キー(バックアップ)有効、
NC検索可能
2:「C」キー有効、NC検索不能(消費メモリ22%減)
3:「C」キー無効、NC検索可能(消費メモリ28%減)
4:「C」キー無効、NC検索不能(消費メモリ50%減)
※この設定は、被切削材を呼び出す前、もしくは定義前は指定変更が可能ですが、
被切削材が定義されてからは変更できません。
※3,4の「C」キー(バックアップ)の無効時は、
法線方向へのオフセット機能は利用できません。
TRYCUT3000ではプログラム上の制限はほぼ無くしています(64bit上限、約172億GB)。
しかし大容量のデータを
扱う場合は、環境の限界をある程度把握しておく必要があります。そこで、
TRYCUTが起動中に確保しているデータの中で、ほぼ大半を
占める被切削材データ用作業空間サイズ(目安)についてまとめて
おきます。
上記被切削材データ保持レベルが1を前提にすると、ひとつの格子点あたり
18byte(Z高さ、投影位置座標、NCブロック検索用データ、ペン情報、
ペンキ情報)の情報量を使用します。
仮に1辺1mの正方形で被切削材の精度(格子ピッチ)1.0mmのワーク
を定義したとすると、
1,001(X方向格子数)x 1,001(Y方向格子数)x 18(バイト)
= 18MB強
※基本的に被切削材の精度(格子ピッチ)を10倍(上記の例では、0.1mm)にすると、その100倍(1.8GB)の
メモリを消費します。
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