G00の動作について


 Q&Aの中でも比較的多い、G00の実際のNC工作機での 動作と、TRYCUT2000/3000で用意している各種設定の動作、考え方を 説明します。


G00MODE=ASYNC2指定時の工具軌跡


<G00(位置決め/早送り)動作>

 NC工作機械にとって、G00とは、無駄なく目的の位置決め点まで移動する という制御命令と解釈し、2軸以上の動作軸があった場合は、特に各軸の 配分まで考慮して直線的に移動(G01)させるような制御は従来から 行われてきませんでした。
 そのため適用方法を誤ると、工具干渉やホルダー干渉などの問題が 発生することが良く知られてきました。

 このような問題を解決するため、NCデータ作成側(CAM)でG00をG01の高速送りに 変換して出力したり、コントローラー(CNC/制御装置)側でG00の位置決めをG01と 同様な直線補間として 制御するモードを用意したりというフォローも行われてきました。ある程度歴史の あるCAMシステムや、最新のコントローラーではこれらのフォローが行 われています。

 しかし、そもそも位置決めの制御に対して将来においてもそのような配慮が 行われるかという意味では何も保証はないと言えます。例えば「より進化した 形=省エネ」をコントローラー側で追求されてしまいますと、このようなフォローは 逆行していることになるからです。

 ですから、NCデータ作成者、シミュレータでの確認作業を行う人、実機で加工 する人は、G00がワークに対して相対的にどのような動作をしているのか、概要だけ でも理解しておく必要があります。以下で説明するTRYCUT2000/3000側で用意した 各種設定の違いも参考になるはずです。


<TRYCUT2000/3000での対応>

 完璧ではないものの、より実際に近く、より安全にというご要望を 満たすため、考えられ得るケースに対応できるように コントローラー定義ファイル(「F3」キー)にG00MODE設定が行えるようにいた しました。 それぞれに良し悪しがあるため、よくご理解していただいた上で 設定していただく必要があります。

LINE:直線補間(従来動作) ※"LINER"又は"LINEAR"でも可
ASYNC:非同期同時スタート(MTLの情報は無視)
ASYNC2:非同期同時スタート(MTLの情報を利用/加速度まで考慮)
UNKNOWN:動作シーケンス不明(安全チェックモード)

 以下では、それぞれの設定モードの特徴を、 始点:(0.0,0.0)から終点:(30.0,10.0)への移動を例にとり、 軌跡図を交えて説明します。

[G00MODE=LINE]
 単純に直線で移動するタイプです。直線補間される制御装置(CNC)で加工される 場合は、このモードを利用して下さい。従来バージョンの動作、ならびにG00MODE 省略時は、このモードで動作します。

[G00MODE=ASYNC]
 このモードは各軸が同時スタートし、それぞれの軸の速度が同じで一定(加速度 無限大)であることを前提にした軌跡です。MTLファイルの設定は無視です。
 直線補間でない工作機械をお持ちの方々などから、このように折れ線で 表現して欲しいと言うご要望もよくいただきました。一部のCAMシステムでも このような描画に対応されているケースもあるようです。また実機の動作を見てい ても、正にこのような折れ線の感覚で見てしまうことがあります。しかし 次のモードASYNC2の軌跡を見ていただければわかりますが、あまり好ましいものとは 言えません。

[G00MODE=ASYNC2]
 上記ASYNCモードに、MTLファイル(F4キー)で定義される早送り時の各軸の最大速度と 加速度の考慮を入れたものが以下の軌跡です。物理的に 加速度を無限大(ASYNCモード)にすることはできないため、現実にはこれに近い 軌跡になっています。ただしこの軌跡は、サンプルMTL(OGUMA.MTL)における 定義(3軸ともに早送り時の最高速度が30000で、かつ加速度が0.3G)を前提にした もので、この設定に大きな ズレがあると、軌跡が変わってきて意味がなくなります。また実際の工作機械は、 一般的に加速度の制御を電流(≒加加速度)で調整していることなど からこれでも完璧でないことを理解しておく必要があります。
 しかし少なくともASYNCの軌跡よりは実際に近いものと思われます。ASYNCのような 軌跡で機械を制御するということは、異常なほど大きな加減速を与えるということに なりますから現実ではあり得ません。各軸同時スタートという条件で あれば、本設定を推奨します。

[G00MODE=UNKNOWN]
 上記ASYNCやASYNC2は、各軸の動作が同時スタートであることを前提にして います。これらは多くの制御装置が同時スタートになっていることもあり特別に モード設定を用意したものです。
 しかし、正確には G00が直線補間を保証していないのと同様に、同時スタートの保証もどこにも ありません。ほとんどが動作の明確な定義が不明であろうと思われます。このような 場合に、安全サイドのチェックが行えるように2点間の矩形を想定して、そのエリア 内を全面チェックするモードがUNKNOWNです。TRYCUT2000/3000の工具軌跡では表示上、以下の ように矩形を描画します。
 制御装置を開発する側にとっても、この矩形外を通過(遠回り)するよう な制御はまず考えつかないだろうという想定をもとに、このモードを用意しています。


※TRYCUT5000でのG00は、回転軸成分が伴うことから問題が更に複雑化するため、現状では G00MODEには対応していません。処理としては直線補間(LINE相当)になっています。


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